ピロリ菌について(2)
ピロリ菌の害
ピロリ菌自体は何の害ももたらしませんが、ピロリ菌の出す毒素によって胃炎が起きます。胃酸は胃粘膜にあるいくつかの特殊な細胞によってコントロールされていますが、胃炎が起こったとき、そのバランスが崩れます。もしも胃酸の分泌を押さえる細胞が足りなくなった場合、胃酸が必要以上に分泌され、結果として潰瘍となります。十二指腸潰瘍の約90%、胃潰瘍の約70%にピロリ菌が関係しているとの報告もあります(8)。
初期の胃炎の場合(表層性胃炎)、胃粘膜では活発に細胞分裂が行われますが、時間の経過とともにこの細胞分裂も勢いを失います。この結果、胃粘膜の細胞の数は減り、萎縮性胃炎となります。次のコーナーでもう少し詳しく説明しますが、この萎縮性胃炎が胃ガンと強い関係があります。
多くの研究発表によれば食道や胃、十二指腸に潰瘍のある患者さんの大多数ががピロリ菌の保菌者だそうですし、保菌者は菌に感染していない人に比べて6倍の確率で何らかの潰瘍にかかる可能性があると言われています(5、13、14)。ピロリ菌を放っておきますと胃炎が起こります。表層性胃炎の時点でピロリ菌を退治できればよいですが、治療を怠りますと潰瘍、萎縮性胃炎、胃ガンへと進行していきます。
胃ガンとの関係
国立ガンセンターが2年に一度発表している統計によりますと、平成11年(1999年)のガンによる死亡数は約29万人となっており、これは人口十万対死亡率で約30%です。毎年、東京は新宿区の人口と同じ数の人がガンでなくなっています。戦後、結核に対する治療が大きく変わり、50年代半ばから脳血管疾患による死亡率が長い間1位でした。しかし、81年よりがんがその不名誉な座につき、残念ながらその座はしばらく安泰のようです。このがんの中でも胃や腸、食道などの消化器に関するものが56%も占めています(12)。その次に多い肺や気管に関するものが全体の約18%と言うことを考えますと、いかに日本人の中に消化器系のがんが多いかがわかります。ピロリ菌保菌者が必ず胃ガンになると言うわけではありません。しかし、その多くは潰瘍や胃炎で苦しみます。そして、胃ガン患者のそのほとんどが萎縮性胃炎を経験しています。このようなことから1994年に世界保健機構(WHO)はピロリ菌を発ガン物質に指定しました(6)。
治療(除菌)方法
ピロリ菌の治療にはいくつかの抗生剤が効果的です。個人差はありますが、処方された抗生剤と胃薬を10日から2週間飲んでいただければピロリ菌を退治することができます。再感染の心配はありません。
(1): Benjamin D. Gold, MD. H. pylori. The Key to Cure for Most Ulcer Patients 2 Feb. 2001. Available: http://www.cdc.gov/ulcer/keytocure.htm.
(2): http://naisikyou.com/iii/
(3): H. pylori Fact Sheet for Health Care Providers 2 Feb. 2001. Available: http://www.cdc.gov/ulcer/md.htm.
(4): http://naisikyou.com/iii/
(5): European Helicobacter Study Group. For Patients-Frequently Asked Questions Available: http://www.helicobacter.org/ehpsg_FAQ.htm.
(6): Van Duynhoven, Yvonne T.H.P., de Jonge, Rob. “Transmission of Helicobacter pylori: a role for food?” Bulletin of the World Health Organization 2001, Vol. 79, Issue 5.
(7): http://naisikyou.com/iii/
(8): Mayo Clinic Jacksonville. Helicobacter Pylori and Ulcer Disease Available: http://www.mayo.edu/mcj/gastro/hp.html.
(9): http://naisikyou.com/index.htm
(10): http://naisikyou.com/iii/
(11): H Miyaji et al. “Helicobacter Pylory Infection Occurs via close contact with infected individuals in early childhood.” Journal of Gastroenterolgy and Hepatology 15 (2000): 257-262
(12): がんの統計 http://www.ncc.go.jp
(13): Douglas J. Passaro, E. Julia Chosy, and Julie Parsonnet. “Helicobacter pylori: Consensus and Controversy.” Emerging Infections 35 (2002): 298-304